原点と着地点

このプロジェクトは2007年になって立ち上げたもので、5月20日の第1回ワークショップで初めての作品が作られることになります。ただ、このプロジェクトの元になるアイディアは2005年終盤頃にはすでに存在していて、「100人の顔Tシャツ(仮)」というような形で企画を練っていました。当初は一人の顔をひとつの作品として100人分の顔をプリントしたTシャツが一堂に会したら壮観だろうなぁという、単純な興味から生まれたものでした。たまたまそのアイディアはそのとき動き出すことができなくてしばらくお蔵入りになっていたんですが、ふとしたきっかけで再び僕の頭にそのことが強く蘇ってきたんですね。


[はじまり] hiderinoとグラグリとお客さんと

まずはhiderinoのいままでを

現在のgrass green closetは2006年1月にスタートしたデザインTシャツのブランドですが、それ以前に2002年から2005年末までフラワーマン(flower-man.net:現在このドメインは当店と無関係)というブランド名でインターネット上のショップとして営業していました。発足当時に作った頭が花の人形(フラワードール)の形からとったブランド名フラワーマンはいわゆるインディーズTシャツの第2世代に当たる時期に発足し、hiderinoが東京を離れてから松山で店舗をオープンするのを機にブランドコンセプトやデザインポリシーを一新し、同名のショップが他県に存在する(フラワーマン発足時には勉強不足で知らなかったんです)こともあって、ブランド名も変更しました。

この仕事を始めてから今までの5年でさまざまなイベントに参加させていただいたり、たくさんの方々に商品を愛していただいています。特にイベント会場と松山の店舗では直接お客様と顔を見ながらお話しすることができるので、そこからたくさんのヒントや反省点を学ばせていただいています。

そういうふれあいの中でいつも消化不良のように感じていたのは、グラグリとお客さんの間にもっと楽しい関係が作れないかということ。もちろんそんな関係が無くてもブランドも僕自身のデザインも今までどおりに進んでいくんだとは思うんですが、そこにもうひとつ何かがあるともっと楽しいんじゃないかと常に考えていたんです。


[転機] デザインとアートとコミュニケーションと

きっかけになったのは

そんなことを考えていた時期に、ちょうど知識欲も高まっていたこともあり参加してみた地元松山のアートNPO主催「ミーツ・アーツ・オープンカレッジ
これに参加することでいままで自分が考え、見てきたものとは違う角度から自分のやろうとしていることを再認識することができたんじゃないかと思っています。この“シフトチェンジ”ともいえるような自分の中での認識の変化が、いままでなおざりにしてきたアーティストとしての部分にギアを入れることになりました。

このオープンカレッジで繰り返し問われてきた“アートとは何か”、“アートにわかりやすさは必要なのか”、“アートの役割は?”そういった数々の問いかけが自分の中でくすぶっていた解きかけの問題を紐解く鍵になるような気がしています。

僕が今生きている時間、今までかかわりを持ってきた場所や人々、それらが単なる通過点ではなくて今後も僕のものづくりに大きな影響を与え続けるものだというように考えると、いままで“お客さん”という風に考えてきた皆さんはもしかすると僕がものづくりをするうえでのパトロン(支援者という意味です)であり、一番の理解者といえるんじゃないか。


[変身] デザイナーとアーティストとhiderino

Tシャツ屋でありながらアーティストへ

僕自身はもともとものづくりが何よりも好きで、子供のころにはもちろん同世代の方々と同じようにガンプラやラジコンカーに夢中になったクチです。ファッションの専門学生時代にも立体作品を作ったり絵を描いたりと常にものづくりを続けていて、自分はそういう職業に就くものと信じて疑いませんでした。

それが、望んだはずの今の仕事を始めてからはいい商品を作ることが一番(もちろん当たり前のことなんだけど)になっていて、それを口実に自分の作品を作るということを棚上げしていたようです。ものづくりに極めてタイトに接してきたはずなのに、自分の原点を置き去りにしていたと考えると皮肉なものですね。

でもそれに気づいてしまったからには放っておけるわけが無いので、変身することにしました。今までは「Tシャツのデザイナー」、これからは「職業:Tシャツ屋」でアーティストとして生きていくことにしました。実際は何も変わっていないようなんだけど、“そういう生き方”を自覚したってことで多分いろんなことが大きく変わっていくはずです。


[出発] はじめの一歩はよちよち歩き

新人アーティスト34歳

こうしてアーティストhiderinoとしての作品作りもグラグリと切り離すことなく進めていくことにしたんですが、じゃあそう宣言してからの第1作目のアート作品は何にしようか。

今まで続けてきたやり方で立体作品や絵画、イラストを作るのも良いんですが、それでは何も変わっていないし、また忙しさを口実に後に追いやってしまいかねない。何よりグラグリを愛してくれているお客さんにとって楽しいことが無きゃ意味が無い。

ここではじめのほうに触れた「100人の顔Tシャツ(仮)」が蘇ってきます。僕の作品として成立し、かつ多くの人々と関わることができて、グラグリで完成した作品を手に入れてもらうことができる。これほどアーティストhiderinoの一歩目にふさわしいものはありませんでした。ただ、このプロジェクトはたくさんの人の顔に出会うことができて初めて成立するもの。「顔のクローゼット」には多くの人の理解と協力が欠かせないんですね。そういうこともあって、はじめてのワークショップは僕が生まれ育った場所、東京の世田谷からスタートすることに決めました。

34歳の新人アーティストhiderinoに何ができるのか。
興味を持っていただけた方は是非ワークショップに参加したり、完成した作品を手にしてください。


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